学会からの提言
これからの小児歯科医療と保健~8020の実践のために~
小児歯科の受診の前に
小児歯科ってどんなとこ?
子どもたちのための歯医者さんです。医科の小児科と同じように、子どもさんを専門にまたは中心に予防や保健指導、治療をしています。専門の知識と技術を持ったスタッフと設備で対応していますから安心です。
小児の歯科治療の前に
歯の治療は大人でも嫌なものです。大人は我慢できることでも子どもにとっては大変です。特に小さいお子さんの場合は次のことに注意して下さい。
- 幼児の治療は体調の良い午前中に受診することをおすすめします。昼過ぎや夕方になると疲れて機嫌が悪くなることが多いものです。
- なるべく嘘をついて連れてこないようにして下さい。かえって嫌がる原因になります。そのかわり治療の後は、たくさん褒めてあげて下さい。
- 幼児は歯科治療で嫌がって泣いたり暴れたりすることもあります。汗をかきますので特に冬場などは下着などの着替えを用意してきて下さい。また治療中はTシャツなど身軽な服装にさせましょう。
- 待合室ではなるべくリラックスさせるように保護者の方が本を読んで聴かせたり、おもちゃで遊ばせてあげて下さい。
小児の歯科治療
乳歯も永久歯も虫歯の治療に特に違いはありません。穴が開くようなむし歯は削って金属やプラスチックで詰めるのが基本です。もっと深いむし歯や痛んだ歯は神経を取るような処置をして金属冠をかぶせたりします。 いずれの処置も麻酔をして治療されることが多く、時間もかかりますので子どもさんにとっては嫌なものです。乳歯はどうせ生えかわるものというのはまちがいです。お子さんの正常な成長発育には欠かせないものです。きれいな乳歯はきれいな永久歯や正常な歯ならび・かみ合わせへの第一歩です。治療と同時により予防もさらに大切です。
麻酔の注意
小児歯科では恐怖や痛みを取り除くために治療のときに局所麻酔をすることが多いものです。これは大人と同じで注射によるものが普通です。特に心配のないものですが、アレルギー体質や慢性病で薬を飲み続けているなどのお子さんは、あらかじめその旨を歯科医師に申し出て下さい。 麻酔をして治療した後、くちびるがしびれていることがあります。2時間ぐらいしびれがとれないことがありますので、くちびるをかんだりさわったりさせないように注意して見てあげてください。もしかんではれたりした場合は、すぐにかかりつけの歯科医師の先生に連絡して処置をしてもらって下さい。
歯を抜いた後の注意
むし歯がひどかったり、永久歯が生えても抜けなかったりした乳歯は抜くことがあります。 このときも麻酔をしますので、注意して下さい。抜いた後は血が止まるまでこちらで管理しますが、そのあと何度もうがいをしたり、さわったりするとせっかく止まりかけていた血が止まりににくくなってしまいます。その場合は清潔なガーゼや綿を15分ぐらい強くかませていると止まります。もし止まらない場合は、かかりつけの歯科医師の先生へ連絡しましょう。
8020ってなんでしょう?
80歳で20本の歯を残そうという運動です。
もうご存じの方も多いことでしょう。でも今のお年寄りの口の中は8020にはほど遠いようです。右の図は青色は何歳ぐらいから歯がなくなり始めるのかを示しています。50歳を超えると、急速に歯の数が減っているのがわかります。また赤色は総入れ歯、つまり一本も歯が残っていないお年寄りの数を赤で示しています。80歳ではなんと60%の人が総入れ歯なのです。
以来,3回の委員会においてチャイルドヘルス懇話会で作成された「イオン飲料とむし歯」「母乳とむし歯」案の検討をおこない,修正した案を日本小児科連絡協議会,日本小児歯科学会,日本小児歯科開業医会で討議し修正の上,認められたのが本案である。本案はこのまま公表し,各学会の会員よりのさらなる意見を加え修正したものを現時点における「考え方」とする予定である。さらに社会的背景の変化に応じて適時修正していく予定である。子どもの歯の問題は口腔衛生(お口のケア)ばかりでなく,子どもの食生活・食育や健康増進とも関連している。今後,本委員会は子どもの口腔に関する種々の問題を必要に応じて臨床心理・栄養などとも連携して検討し,小児科医と小児歯科医の総意として,現時点における「考え方・指針」を作成していく予定である。
上の図は抜いた歯の数を示しています。
歯を失う原因として若い時はむし歯が多いのですが、年齢と伴に歯周病(歯槽膿漏)が歯を失う原因のトップになってきます。50歳を超えると、急速に歯を抜く数が増えているのがおわかりですね。一生自分の歯で食べるために、もっともっとお口のケアを心がけて8020を実現したいものですね。
どうしてでしょう?
下の写真は小児から高齢者までの歯の治療後の写真です。症状によって色々な治療方法がありますが、いずれの場合でも治療後の定期管理が必要です。管理が不十分だと長くもたなくなりますので注意しましょう。
歯科疾患は早期発見・早期治療も大切ですが、予防がさらに最優先されます。歯は悪くなったとしても、現在の最新の歯科医療では様々な治療ができますが、いくら良い治療を行っても元の自然の歯にはかないません。生涯自分の健康な歯を保持するためにも、お子さんのときからの「かかりつけ歯科医師」をもって歯科疾患の予防と定期管理を心がけましょう。
〔ブリッジ・前歯の差し歯の写真は鹿児島大学歯学部第一補綴学講座・田中卓男先生のご好意による〕
どうしたらいいのでしょう?
むし歯や歯周病の予防を十分にして、早くから歯を削ったり抜いたりするような治療を受けないで済むようにすることです。でも予防と一口に言っても色々あります。ご家庭での歯みがき習慣などのケアはもちろんですが、それ以外には歯科医院での定期的なチェックを受けることが大切です。特に成長するお子さんは小児歯科医院での定期健診を是非おすすめします。
小児歯科では
むし歯や歯周病の予防を十分にして、早くから歯を削ったり抜いたりするような治療を受けないで済むようにすることです。でも予防と一口に言っても色々あります。ご家庭での歯みがき習慣などのケアはもちろんですが、それ以外には歯科医院での定期的なチェックを受けることが大切です。特に成長するお子さんは小児歯科医院での定期健診を是非おすすめします。
むし歯治療開始年齢が低いほど、12歳でむし歯の本数も多くなる傾向があります。しかし、小児歯科医院で定期健診を受けている子どもは受けていない子どもに比べてむし歯は少ないようです。小さい時からの予防と管理がいかに大切かわかると思います。
日本小児歯科学会でも
8020の達成は子どものときからの予防という考え方が浸透することによってはじめて達成可能なものになります。むし歯が減った分、歯並びや顎の関節の問題がクローズアップされてきていますが、まだまだそれらの理解や治療に関しては不十分であり、保険導入もこれからの課題です。
よりよい小児の歯科医療を守るためにこれからも小児歯科学会は歯科医師会と協力して、国に提言していきます。
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