学会からの提言
新型コロナウイルス感染の拡大による休校措置ならびに外出自粛に伴う
子ども健康状態の低下を防止するための提言
令和 2 年 4 月 20 日
公益社団法人日本小児歯科学会
新型コロナウイルスの感染拡大により、3月初めから全国の小中学校の休校措置がとられたことで、授業が行われなくなった他、年度末の行事は中止または縮小されました。また政府から緊急事態宣言が発出され、日本全国で外出自粛要請がだされています。このような感染症の拡大防止を目的とした長期間におよぶ在宅での学修や登校停止は、これまで例を見ない出来事であり、東日本大震災発生後の避難生活を余儀なくされた被災者の方々と同様に健康状態の悪化が心配されます。
災害発生の際とは異なり、一部の商品を除く生活用品と食品の供給や流通には支障をきたしていない状況下で自宅にとどまる時間が増加した状態は、身体の成長ならびに運動機能の発達期にある子どもたちの心身に大きな影響を与えることが危惧されます。特に最近の子どもたちの生活習慣の中で、TV ゲームやインターネット上の動画の視聴に費やす時間はかつてないほど増加しています。このような在宅での時間の使い方は、身体活動、特に運動の時間を減少させることで、子どもの肥満を招く恐れがあります。また、学校や幼稚園への登校が妨げられることで生活リズムを失い、ひいては食生活の乱れを招き、甘味食品や飲料を摂取する頻度が増加しやすい状況を生んでいます。このような状況下では、口腔内の環境が悪化し、う蝕や歯肉炎などの発生を助長するとともに身体運動能力の低下を生じて子どものロコモーティブ・シンドロームを招くことになりかねません。このような時であるからこそ、家族で生活習慣を見直すようにしましょう。
家族でできる子どもの生活習慣の見直し
- 十分な睡眠を取るようにしましょう。
就寝時刻、起床時刻を決めて十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。十分な睡眠は身体の免疫力を高め、感染症のリスクを引き下げます。 - 栄養バランスのとれた食事を取るようにしましょう。
カップ麺などのインスタント食品やコンビニのおにぎり・お弁当などでは、カロリーは高くても塩分が高く、糖質・脂質が多いため成長期の子どもには必要な栄養素が不足しがちです。 - 規則正しく、適切な間食を取るようにしましょう。
間食を取る時間と 1 日分の量は保護者が決めてあげるようにしてください。糖分の多い食品は短時間で済ませましょう。糖分が口の中に長時間とどまることでむし歯の原因菌が増加します。また、保護者が間食の量を決めないと、子どもは好きなだけ間食をとってしまいます。そうなると食事の量が減ってしまい、成長に必要な栄養のバランスが崩れます。 - 1 日最低 2 回の歯磨きを行いましょう。
小学校低学年の 8 歳頃までは、夜の就寝前に保護者の仕上げ磨きが必要です。6 歳頃に歯並びの一番奥に生えてきた第一大臼歯(6 歳臼歯)は、生え始めから 2 年位はまだ背が低いために咬み合っていません。そのため、本人のみで歯磨きを行っても歯ブラシの毛先が歯に当たっていません。生え始めから1〜2年位がもっともむし歯になりやすいため、仕上げ磨きが必要です。 - 適度な運動を行うようにしましょう。
大人数での外遊びはできませんが、家族での散歩や家庭内での体操など、からだを動かすことが運動機能の低下を防ぐ上で必要です。TV ゲームやスマートフォン・タブレット、ユーチューブの視聴などを保護者が制限してください。ゲームやネット依存症は子どものかかりやすい病気と認定されています。
参考資料
- 平成 30 年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書、スポーツ庁、
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1421920.htm - 子どもロコモと運動器検診について、林 承弘、柴田輝明、鮫島弘武、日本整形外科学会雑誌、91:338‐344、2017.
- 生活習慣および体力との関係を考慮した幼児における適切な身体活動量の検討、中野貴博、春日晃章、村瀬智彦、発育発達研究、46:49-58、2010.
- 子どもにも「ロコモ」生活に体動かす遊びを、医療ニュース トピックス、時事メディカル、
https://medical.jiji.com/topics/873 - 子どももたちの体に異変!? “ロコモ”の可能性を調べるチェックリスト、NHK
- これからは知っておきたい!子どものロコモ読本、全国ストップザロコモ協議会
https://sloc.or.jp/wp01/wp-content/uploads/2019/03/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%83%AD%E3%82%B3%E3
%83%A2%E8%AA%AD%E6%9C%AC_A510.pdf - IT の功罪-電子メディアの子どもへの影響とその対応、佐藤和夫、小児保健研究、18:18-22、2018.