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学会からの提言

「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」の補足版(一般の皆様向け)を公開しました。

2023年2月21日
公益社団法人 日本小児歯科学会

2023年1月に「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」(日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会合同の提案)が発出されました。小児への使用に関して、これまでより高いフッ素濃度の歯磨剤を使用しても問題ないのかご心配される皆様もおられると思います。今回の提言で変更となったフッ化物配合歯磨剤のフッ素濃度(補足1)、使用した際の安全性(補足2)について説明いたします。

補足1.歯が生えてから2歳、および3〜5歳に用いられる歯磨剤の推奨フッ化物濃度が500ppmから1000ppm、6歳以上は1500ppmへと変更された理由について

世界保健機構(WHO)の推奨1)では、歯磨剤に含めるフッ素濃度は、年齢に関係なく「1000-1500ppm」としています。加えて、1000ppm未満のフッ化物配合歯磨剤では齲蝕予防効果が認められていないことも示されています。これらのエビデンスに基づき、今回の提言ではフッ素濃度1000ppm以上の歯磨剤について、年齢に応じた使用量を示すことで有効性と安全性の両方を担保した内容へと変更が行われました。従って、6歳から成人までは、フッ素濃度1500ppmの歯磨剤の使用を推奨していますが、小児においては特に容量を守っていただき、体格の成長に合わせて使用量の調整をお願いします。

補足2.安全性について

フッ素はさまざまな飲食物に含まれており、国内の食品安全委員会の基準ではフッ素の耐容摂取量は1日あたり0.05mg/kgです2)。そこで、飲食物からと今回の推奨に基づくフッ化物配合歯磨剤からのフッ素摂取量を計算した例を示します。

【1歳0か月児の場合(平均体重約9kg)】
1歳0か月児の歯磨剤以外の飲食物からのフッ素摂取量を、近年の国内の研究を引用して、平均約0.18mgとします3)。1000ppmのフッ化物配合歯磨剤を米粒程度(1-2mm)使用した場合に含まれるフッ素量は0.05mg-0.1mgであり、これを1日2回使用し、仮にすべて飲み込んでしまったと想定しても、歯磨剤からのフッ素摂取量は0.2mgとなります。合計して0.38mgですから、フッ素の耐容摂取量の0.45mgには達しません。

【3歳0か月児の場合(平均体重13-14kg)】
3歳0か月児の歯磨剤以外の飲食物からのフッ素摂取量は、いくつか研究がありますが、国内の研究を引用して、平均約0.3mgとします4)。1000ppmのフッ化物配合歯磨剤をグリンピース程度(5mm)使用した場合に含まれるフッ素量は0.25mgであり、これを1日2回使用すると、合計0.5mgとなります。3歳児で歯磨剤を吐き出せずに飲み込んでしまっている割合は平均で34%という国内の研究があり4)、ここから歯磨剤からのフッ素摂取量を算出すると約0.17mgになります。合計して0.47mgですから、フッ素の耐容摂取量の0.65-0.7mgには達しません。

お茶や海産物の中にはフッ素濃度の高いものもあり、また成長の個人差もありますので、成長差や食習慣によるフッ素摂取量には差があるので注意が必要です。乳幼児には、含まれるフッ素量に留意して与える量を調整しましょう5,6)。また、歯磨剤を吐き出したり、うがいが上手にできない場合は、歯面をティッシュなどで拭き取る、歯磨剤の量を調整したりすることでフッ素摂取量を抑えることができます。

なお、1500ppmの歯磨剤は6歳未満の小児に使用する事は控えましょう。歯磨剤は年齢に応じた適切なフッ素濃度の製品を選び、利用方法を守るようにしてください。齲蝕予防には、フッ化物配合歯磨剤の使用だけでなく、食習慣や歯磨き習慣を含めた生活習慣も大切です。小児の成長と生活習慣に応じた齲蝕予防方法を、歯科医師に相談しながら進めるのもよいでしょう。

参考文献

1) WHO. Fluoride toothpaste, 2001.
https://cdn.who.int/media/docs/default-source/essential-medicines/2021-eml-expert-committee/applications-for-addition-of-new-medicines/a.14_fluoride-toothpaste.pdf

2) 食品安全委員会. 清涼飲料水評価書 フッ素, 2012.
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000144307_2.pdf

3) Yanagida R. et al., Estimation of daily fluoride intake of infants using the microdiffusion method, J Dent Sci, 14(1):1-6. 2019.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1991790218304719?via%3Dihub

4) Murakami T. et al., Fluoride intake in Japanese children aged 3-5 years by the duplicate-diet technique, Caries Res, 36(6): 386-390, 2002.
https://www.karger.com/Article/Abstract/66537

5) 西真紀子, フッ化物配合歯磨剤の使用開始時期, 2022.
https://d.dental-plaza.com/archives/15894

6) 日本歯科医師会, テーマパーク8020, フッ化物 お口の予防とケア(2023年2月4日アクセス)
https://www.jda.or.jp/park/prevent/index05_04.html

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